第22話:ゆうとと中東情勢1
突然のニュース
アメリカが中東の国イランに軍事攻撃を行った。
その速報は、夜のうちに世界中へ広がった。
翌日—— 世界の株式市場は、大きく崩れた。
新NISAが始まって以来、最大級の下げ幅。ゆうとは震える指でアプリを開いた。
保有している投資信託はすべて赤く染まり、含み益は消え、評価額は過去最低を更新していた。
テレビでは専門家たちが深刻な表情で語る。
「中東情勢の緊迫化で原油供給への懸念が高まっています」
「オイルショック級の影響も考えられます——」
時間を味方にして育てるはずだった資産。
だが“戦争”という想定外は、一瞬でその前提を揺さぶってくる。
「……売ろうかな」
これ以上下がる前に。まだ傷が浅いうちに。
逃げるなら、今かもしれない。
「ヒカッパ……ごめん」
小さな鉢に目を落とす。ゆっくり育てるつもりだったのに。
そのとき——スマートフォンが小さく震えた。
差出人:みおな
件名:ゆうとくん、大丈夫?
ゆうとくん
ニュース、見たわ。かなり大きく下げているみたいね。
ヒカッパの様子は平気?
無理に返事はしなくていいけれど、少し気になって連絡しました。
画面を見つめたまま、ゆうとは動けなかった。
たった数行のメールなのに、心の奥をそっと撫でられたような気がした。
揺れる心と向き合う夜
売るべきか。続けるべきか。答えは出ない。
ただ、ヒカッパが静かにこちらを見ている。
ゆうとは深呼吸をし、みおな先生に返信を書き始めた。
差出人:ゆうと
件名:Re:ゆうとくん、大丈夫?
みおな先生
ニュースを見て、不安でいっぱいでした。
正直、逃げたい気持ちでいっぱいです。
でも、ヒカッパを見ていたら……少しだけ落ち着きました。
もう少しだけ、考えてみます。
静けさの中で
送信ボタンを押し、ゆうとはもう一度アプリを開いた。
数字はまだ赤いまま。しかし、さっきよりも胸のざわつきは少しだけ静まっていた。
ヒカッパは変わらずそこにあり、静かに光っていた。
数字はまだ大きく変わっていない。
しかしその静かな画面が、今日はなぜかとても安心できた。
ヒカッパは静かに光り、変わらずそこにあった。
世界情勢は予測できない形で市場に影響します。 暴落は突然やってきますが、不安なときほど「行動の選択」が問われます。 感情に押されて動くのではなく、波を眺めるように距離を置きながら、 自分のペースで積み立てを続けることが長期の成長につながります。