第2話:水耕栽培、はじまりの一滴
家に帰ると、ゆうとは机の上にそっとタネを置いた。 玄関からずっと気になって、胸のあたりがほわほわしていた。
「まずは……水をあげればいいのかな」
ゆうとはキッチンから小さなお皿とキッチンペーパーを取り出した。 ペーパーを折りたたみ、水を含ませ、指先で余分な水を落とす。
用意ができると、タネをその上にそっと置いた。
「ここなら、しばらく様子を見られるよな」
タネに語りかけるように言うと、ほんの一瞬、光が強くなったように見えた。
「……え、本当に分かってる?」
冗談のつもりだった。 でもタネは、まるで嬉しそうに内部の光をふわりと揺らした。
ゆうとは思わず笑った。
「よし、じゃあ今日からここが君の場所だ」
タネは静かに光ったまま、やさしい存在感を放っていた。 ゆうとは机の前に座り、しばらくその光を眺めていた。
——こうして、不思議なタネとの新しい日常が始まった。