第20話:ヒカッパと冬(前編)
「何かしてあげたい」ゆうとの葛藤
この物語は、植物の成長を通して、長期・分散・積立といった資産形成の考え方を描く連載作品です。
第20話では、冬に元気をなくしたヒカッパを前に、「何かしてあげたい」という気持ちと葛藤する、ゆうとの姿を描きます。
冬本番の寒さとなり、ゆうとはマフラーやダウンジャケットを手放せない季節になった。 朝、玄関を出ると、吐く息が白くなる。
ベランダに目をやると、小さなヒカッパがそこにいた。 以前よりも動きが少なく、なんだか元気がないように見える。
ヒカッパは、まだ小さい。 犬や猫のように鳴くわけでもなく、寒いとも言わない。 だからこそ、ゆうとは少し不安になった。
日中は、できるだけ日光を浴びられるように、ヒカッパをベランダに出してあげている。 それでも、仕事を終えて家に帰る頃には、ヒカッパは冷え切っているように見えた。
そんな考えが、頭をよぎる。 寒そうだから、少し温かい場所に移したほうがいいのかもしれない。 栄養が足りていないのではないか、とも思う。
あれもしてあげたい。 これもしたほうがいい気がする。
でも、同時に思った。 自分はヒカッパのことを、どれだけ分かっているのだろうか。
冬が深まるにつれて、ヒカッパはさらに静かになった。 眠っているようにも見える。 それが正常なのか、それとも異変なのか、ゆうとには判断がつかなかった。
だから、ゆうとは決めた。
自分の判断で、何かをしてしまう前に、専門家に相談しよう。
そうだ!みおな先生にメールを送ろう!
差出人:ゆうと
件名:ヒカッパの様子について
みおな先生
こんばんは。最近は寒くなってきました。
ヒカッパの様子が心配です。
最近なんだか元気がないというか・・・。
ヒカッパの写真を送ります。見てもらえますか。
水やりが少ないせいでしょうか?
それとも、肥料が少ない?寒さ?
どうしたらいいのか分かりません。
アドバイスをいただけませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。
みおな先生に、メールを書いた。
ヒカッパの様子と、今の不安を正直に伝えた。
しばらくして、返信が届いた。
差出人:みおな
件名:Re:ヒカッパの様子について
ゆうと様
メールありがとう。ヒカッパの事、
心配しなくて大丈夫。
次の週、植物園に来てください
その一文を読んで、ゆうとは少し安心した。
「何かしたい」時こそ、立ち止まる。
市場が冷え込んだり、成長が止まって見えたりする時、人は焦って「余計な手出し」をしてしまいがちです。
しかし、自然(市場)にはサイクルがあります。不確かな自己判断で動く前に、信頼できる指針に立ち返りましょう。