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第11話:育て方の違いを知る|商品も植物も特徴を正しく把握する

植物園の記憶がヒントに

夕暮れのオレンジ色が差し込む小さな部屋。 鉢植えになったヒカッパは、そっと風に揺れながら、ゆうとの机の横で静かに呼吸していた。

ゆうとは、その植物の姿を眺めながらひとり呟く。

〈「株、債券、ゴールド……みんな性格が違う。 景気の波が来たら、何をどれくらい育てたらいいのか、まだよくわからない。」 〉

ゆうとはそう言いながら、手元のスケッチブックを広げた。これは以前、資産形成のヒントとして書き留めたメモだ。

パラパラとページをめくるうち、先日行った植物園の記憶が蘇った。

「そういえば、あの植物園には温室があったな。湿気を好む熱帯植物の部屋もあれば、乾燥を好む砂漠の植物の部屋もあった。それぞれ**成長に適した環境**が全く違うんだ。」

資産の特性を環境で例える

その記憶と照らし合わせるように、スケッチブックのページを指でなぞる。そこには、金融商品を植物の特性に例えた図が描かれていた。

  • 株式 → 太陽の下で大きく育つ植物(晴天=景気拡大期に強い)
  • 債券 → 半日陰で安定する植物(曇天=景気後退期に安定)
  • ゴールド →環境に左右されず生き残る特殊植物(乾燥地帯:非常時に強い。ただし、維持管理にコストがかかる)

ゆうとはその図を見た瞬間、思わず声を漏らした。

〈「そうか……将来、景気の天候がどうなるかなんて誰にもわからない。どの資産(植物)が繁栄するかもわからない。だから、 いろいろな植物を育てることで、リスクを分散するんだね。そう考えると、この構成(ポートフォリオとも言う)の比率がすごく大事になるね。」〉

資産の庭(ポートフォリオ)を作る

ゆうとはヒカッパを見つめながら、図に描かれた解説文を読み進める。

「どの植物が一番大きく育つかは、天候や環境次第で誰にもわからない。だから、一つに絞らず、複数の異なる性質を持つ植物を育てることで、もし気候が変わってどれかが失敗しても、庭全体は豊かに保たれる、か。」

ゆうとは深く納得し、メモを取りながら大きく頷いた。

〈「……僕の資産形成は、色々な環境の植物を集めて守り育てる植物園(独自のポートフォリオ)をつくることなんだ。」 〉

ゆうとの心の中でストンと何かが落ちる音を聞いたヒカッパは、その言葉に呼応するように、淡い光をふわりと灯した。

「よし。僕の“資産形成の庭”は、今まさに育ち始めたところだ。」

資産の特性を知り、異なる性質を持ついろいろな資産適切な割合で組み合わせること分散投資ポートフォリオ)が、長期的な資産形成の安定につながります。