第12話:焦りの正体 ――FOMOという影
ニュースと焦燥感
冬の朝。窓の外では白い息を吐きながら歩く人々が、いつもより早足で通り過ぎていく。部屋の中は暖房の熱でほんのり暖かいが、その空気とは裏腹に、ゆうとの胸の中ではモヤモヤした感情が渦を巻いていた。
机の上のスマホには、ニュースやSNSの通知が溢れている。
- 「〇〇株が急騰!」
- 「ビットコイン過去最高値更新!」
- 「ゴールドが連日高値!」
スクロールすればするほど、胸がざわつく。ゆうとはすでに1年間、計画的に資産を育てていたにもかかわらず、その規律が揺らぎ始めるのを感じた。
毎日ゴールドが最高値を更新している。インフレ・関税・戦争といった世界のノイズに強そうだよね。前々からすごく興味があったんだよ。よし、少し買ってみよう!
ゆうとは思い切ってゴールドファンドを購入した。
ヒカッパの鉢が見える位置にあるにもかかわらず、その存在に気づく余裕すらない。ゆうとはスマホを握りしめたまま、ホッとした。
FOMOの正体と教訓
1週間後、ゴールド価格の暴落のニュースが流れる。 ゆうとはパニックに陥った。自分も売り抜ければよかったかな…?大失敗しちゃった😿。 頭が真っ白になった。熱くなった胸を冷ますように、隣の机に置いてあるスケッチブックに目をやった。以前、書き留めたメモのページが開いている。
**FOMO:Fear Of Missing Out (機会を逃す恐怖)**
- 人は、何かが「上がっている」と聞くと、判断ではなく焦りで動きたくなる。
- これが、衝動的な売買や高値掴みを引き起こす心の影である。
ゆうとはスマホを伏せ、押し黙った。そして、ヒカッパの鉢をそっと持ち上げた。
彼は自分自身に問いかける。そして、植物の成長に関する別のメモを思い出した。
ゆうとは深く息を吐いた。
育むものとしての投資
ゆうとはヒカッパを元の場所に戻し、まっすぐに見つめた。
その瞬間、ヒカッパがふわりと淡い光を放ち、まるでゆうとの気持ちに寄り添うように揺れた。
ゆうとはスマホを伏せたまま、椅子に背中を預けた。
部屋の空気が静かに暖まり、ゆうとの心にもひとつ、確かな灯りがともった。
根っこは土の中で栄養を蓄え、強くなっていきす。 FOMOに支配されてしまうと、「周りの植物はもっと早く育ってる!」との焦りから 過剰に水や肥料を与えてしまい、結果的に傷つけてしまいます。注意しましょう。