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第9話:初めての小さな来訪者

ヒカッパの葉が増えてきたある朝、ゆうとはいつものように葉を眺めていた。 ふと、葉の裏に小さな点のようなものを見つける。

近づいてよく見ると、それは黄緑色の小さなアブラムシが一匹だけ、ちょこんと乗っていた。 「これ……もしかしてアブラムシ……?」と、ゆうとは胸がざわついた。

〈葉の裏の小さな来訪者。ルーペで覗くと、丸くて小さな姿が見える。〉

相棒に何かあったら嫌だ――そう思ったゆうとは、ヒカッパの鉢を抱えて植物園へ向かった。 みおな先生に相談すれば、きっと安心できる方法を教えてくれるはずだ。

植物園にて:みおな先生のやさしい観察

「みおな先生! ヒカッパにアブラムシが一匹ついているんです!」と慌てるゆうとに、 みおな先生は落ち着いた声でルーペを差し出した。

ルーペの中のアブラムシは、丸く小さく、どこか愛嬌のある姿だった。 みおな先生はにっこり笑って言う。 「一匹だけなら大丈夫。まずは優しい方法で対処しましょう。」

シャワーでやさしく洗い流す

みおな先生は実践的に教える。 「アブラムシは脚が弱いから、弱め〜中くらいの水圧で葉の裏に水を当てて流すだけで落ちることが多いの。 若い植物には薬剤を使わず、まずは物理的に取り除くのが安全よ。」

「葉を支えて、土が流れないように鉢底をおさえる。数日ごとに様子を見ることも忘れずに。」 みおなの言葉には、ゆうとが安心して行動できるような穏やかさがあった。

〈みおなの手つきは慣れていて、ゆうとは安心してそれを見守る。〉

帰宅したゆうとは、ベランダでぬるめのシャワーを用意した。葉の裏をそっと支えながら水を当てると、 小さな来訪者はぽとんと落ちて、鉢の土に消えた。

「よし、これで大丈夫だよ、ヒカッパ。」 シャワーの水滴が葉の上で光り、ヒカッパはいつものようにほのかに光を返した。

ゆうとは日誌にこう書いた――「ヒカッパが虫に狙われるのは、元気な証拠。小さなことを見逃さずに対処する習慣は、投資の世界でも役立つ」。

小さな危機は、ゆうととヒカッパの絆を深める出来事になった。 ゆうとは、これからも相棒の変化に気づき、やさしく守っていこうと決めた。