第14話:揺れる心と静かな画面
市場の喧騒とSNSの波
夜、ゆうとはベッドの端に座り、スマホを握りしめたまま動かなかった。
今日は市場が大きく動いた。ニュースアプリには派手な見出しが並び、SNSには誰かの成功報告が無限に流れてくる。
「今日だけで+38,000円!」
「積立なんて遅いよ。攻めるやつが勝つんだよ。」
「ETF最高!今動かないやつは置いていかれる。」
ゆうとは画面をスクロールするたび、胸の奥がざわついていくのを感じた。
積み立てた金額は少しずつ増えているものの、SNSの派手な報告と比べれば、まるで点のように小さかった。
スマホを置き、視線を窓辺に向ける。ヒカッパは今日も静かだ。昨日と同じ葉の形。昨日と同じ光。
ゆうとは写真を撮り、みおな先生にメールを送った。
差出人:ゆうと
件名:今日はなんだか落ち着きません
みおな先生
こんばんは。今日もヒカッパの写真を送ります。
今日、市場がすごく動いていました。SNSでは成果を出している人がたくさんいて、正直焦りました。
なんだか、置いていかれるような気がします。
ヒカッパも投資も、このままでいいのか迷っています。やっぱり、もっと積極的に動いたほうがいいんでしょうか?
沈黙の二日間
みおな先生からの返信を期待したが、すぐには来なかった。
ゆうとはスマホを何度も見て、「みおな先生、遅いなぁ」と思った。 だが、熱狂的な市場のニュースやSNSの報告が少しずつ減っていくのを見るうち、 自分がどれだけ即座の反応を求めていたかに気づいた。
翌々日の夜、メールの通知が鳴った。ゆうとは深呼吸をし、画面を開いた。
差出人:みおな
件名:Re:今日はなんだか落ち着きません
ゆうと様
メールありがとう。そして、その正直な気持ちを書いてくれて嬉しいです。
ひとつ大事なことを伝えます。
市場が揺れる日は、心も揺れる。
それは当たり前のこと。悪いことでも、弱さでもありません。
もうひとつ。
揺れたときに行動すると、たいてい間違うの。
SNSには成果だけが並びます。でもその裏にあるのは──
そういう現実です。
- 焦って買った人
- ルールを崩した人
- 偶然うまくいった人
本当の成長は、静かに続けた人だけに訪れます。 今日の写真、とてもいい状態よ。ヒカッパは比べない。 風の日はしなり、雨の日は静かに待つ。
投資も同じ波に飲まれるのではなく、波を眺めながら続けること。
今日、心が揺れたことは失敗じゃないわ。その揺れをちゃんと自分で感じ取れたこと。それが大きな前進よ。
静けさを選ぶ
メールを読み終える頃、胸のざわつきが少し和らいでいた。
ゆうとはゆっくり返信を書く。
差出人:ゆうと
件名:ありがとうございます
みおな先生
メールを読んで、少し落ち着きました。
今日はSNSの言葉が波のようでした。飲まれそうだったけれど、今は岸に戻れた気分です。
ヒカッパも投資も、急がず続けていきます。ありがとうございます。
送信ボタンを押し、もう一度積立アプリを開く。
数字はまだ大きく変わっていない。
しかしその静かな画面が、今日はなぜかとても安心できた。
ヒカッパは静かに光り、変わらずそこにあった。
市場が揺れる日は、心が揺れる日。これは投資家として避けられない感情でしょう。 しかし、焦りや他人の成功報告(SNSの波)に駆られて行動すると、たいていルールを崩し、失敗してしまいます。 波に飲まれず🌊、波を眺めるのです🙎。周りに流されず、淡々と積み立てましょう。